第二話 確率以上に起きる

世間で何かとても不思議な出来事がが起きたとしても、 大抵は“ただの偶然”で済まされてしまいます。 今の科学ではどうしてそんな事が起きるのか分からないからです。 今回は“科学的”な物の見方と、それに当てはまらない“偶然”について 見ていきたいと思います・・・。

一つ簡単な例を挙げて、偶然の一致を“分析”してみましょう。 ★貴方はある問題について悩んでいて、しかもそれを誰にも話していません。 そこへ友人が訪ねてきます。 もちろん貴方の問題とは関係のない理由ですし、その問題の事も知りません。 貴方は友人と他の用件について話をしました。 そしてその後、ふと友人が貴方の問題をとく鍵となるようなことを語りました。 日常生活の中で時々起こるような偶然の一致です。 これをちょっと“科学的”な見方でみてみましょう。 “科学的”とは簡単に言うと「理由をたどること」です。 科学は「物事にはどんなことにも必ず原因がある」ことを前提としています。 まず、貴方と友人が始めて会った時のことも説明がつくでしょう。 誰かの紹介であったとか、職場で一緒になったとか。 そして、友人が貴方を訪ねてきたことにも理由があります。 友人が貴方の問題をとく鍵となるようなことをどこで知ったのかも 説明がつくでしょう。 けれど友人は聞かれてもいない事を、何故、 そのことについて悩んでいる貴方の前で話しだしたのでしょうか? 「貴方に聞かれたから、話した。」そのような明確な理由はありません。 “偶然”なんとなく気が向いたから、“偶然”ふと思い出したから。  この例ではなくても似たような出来事は沢山ありますね。 食べたいと思っていたものが食卓に並んだ。貴方が食べたいと思ったことも、 料理する人がそれを選んだのにもそれぞれ理由があるのでしょうが、 それが奇妙に一致することは“偶然”の一言で済ますほかありません。 普段は気に留めもせず、見過ごしがちですが、 貴方の身の回りには今の科学では説明のつかないとこが溢れているのです。 この「意味のある偶然の一致」シンクロニシティとは何なのでしょう? “意味のある偶然の一致がこの世にあるのなら、きっとこの世の中は こんな仕組みになっているからだろう”という仮説をユングは立てています。 “世の中のもの全ては 繋がっていて 互いに連動している”  世の中には、科学ではまだ発見されていない、ある種の繋がりがある・・・。 そう仮説を立てないと、確率以上に起きる“意味のある偶然の一致”は 説明する事ができません。 何の繋がりも、理由も、原因もないのに、 「意味のある」ことは起こりようがないからです。 この繋がりは、心理学の世界ではよく、氷山に例えられています。 海面から出ている氷山は、普段、私達の意識の表面にでている表層意識。 海面から出ている部分より、はるかに大きく、水中に没している部分が 深層意識。無意識の部分です。 そして、海面からは別々の塊に見えた氷山は、海の底へ行くと じつは全てが繋がっていて一つのものなのです。 意識の奥底ではこの世のあらゆるものが繋がっている。 それがユングのシンクロニシティの仮説です。 次回は、それについてもう少し詳しく話を進めていきます。  

☆この繋がりの証拠ともいえそうな、2つの不思議な話をご紹介いたします。 一つ目は「シェルドレイクの仮説」を確認するために行われた実験です。  皆さんも目にした事があるかと思いますが、 目の錯覚を利用した面白絵を使った実験です。 一見したところ、白と黒の抽象的な模様にしか見えない絵が、視点を変えて みると帽子をかぶった女性が浮かび上がってくる、といった類のものです。 シェルドレイクの仮説とは、例えば、この面白絵の答えを ある地域で公開するとします。 するとその地域内では、まだ答えを知らない人の正解をだす確率が上がり、 さらに、その答えが当たり前のように広範囲に浸透していくと、 地球上では、その答えをまだ知らない人も、当たり前のように 答えられるようになるだろう、という仮説です。 

この仮説を実証するために、イギリスのテレビ局テームス・テレビが 公開実験を行いました。 まず、2枚の面白絵をあるグループに見せて、何の絵か答えてもらいます。 そして、テレビでこの2枚の面白絵を放送します。 絵の答えは、二枚のうち一枚だけを公開します。 そして、テレビ放送を見ていない他のグループに2枚の絵を見せます。 (被験者は両方のグループとも同じ年代の人を対象にしています。) すると、答えを見せていない方の絵は、テレビ放送の前に実験したグループと 同じような正解率だったのですが、 答えを公開した方の絵の正解率は2倍にもなっていました。 人間の“集合意識”を目の当たりにしたような結果です。 シンクロニシティや不思議なことに興味のない人も、心の奥底の 自分では気付かない所から、集合意識の影響を受けているのです。 流行物が良く見えるという心理にも関係がありそうです。 また、今、外国語を習得するなら、きっと英語が一番習得しやすいのでは? と思ってしまいます。 

☆もう一つは、自然界の“集合意識”とも言えそうな不思議な話です。 ダイナマイトなどに使用されるグリセリンの話です。 グリセリンは粘りけのある無色透明の液体で、摂氏17.8度以下で 結晶化する性質を持っています。 ところが、これはある年のある日、ある瞬間から結晶するようになったのです。 それまでは、グリセリンは温めても冷やしても結晶化することは ありませんでした。 信じられるでしょうか?しかし、これは紛れもない事実なのです。 その変化は突然のもので、19世紀、ウィーンからロンドンへ運送中だった グリセリンが突然結晶化したのです。人為的なものは何もありません。 そして、さらに驚くべきことに、まったく同時期にカナダのジャイアント・ パウダー・カンパニーという化学会社でも、突然グリセリンが結晶化した のです。 その後は、結晶化したグリセリンを核にすれば、簡単に結晶化させることが 出来るようになりました。 しかし、不思議な事に、いつのまにか結晶化したグリセリンを使わなくても、 グリセリンは簡単に結晶化するようになってしまったのです。 この事はとても奇妙な現象に見えます。けれどこの現象は、現在でも 新しい物質を結晶化させようとする時に頻繁に起きるのだそうです。 一度、結晶に成功した新しい物質は、それ以後は、 簡単に結晶になってくれるのです。 この不思議な事実も、自然界に存在する“集合意識”の成せる技では ないでしょうか?